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Author:柚木祥子
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↑最近全く使わないPIYO。

「雨衣子」に改名。でも、サイトのお遊びwikiの管理人名は柚木祥子で、シーナやシルバも相変わらず「ゆき」呼びです。ただ、変更がめんどくさかっただけとも言う。


現在鬱病&SAD持ち。
半ヒッキー。
受験生なのにブログ運営なんかしている馬鹿。
無事大学生になれました。でも、相変わらず人に疲れやすいです……。





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独りが大好きで大嫌いで大好き。

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FAUST


 通信制の高校の良い所は、学生は学生でも、高校生には見えない所だと思う。


 制服で通っている学生も中にはいるけれど、わたしはいつも私服。あまり制服には良い思い出がないので、あえてしまっている。
 身につけることはない。
 制服の方が楽だけれど、学校に通う上で困ったことはない。むしろ、私服の方がわたしには過ごしやすい。


 私服なら、普段、制服で入るには少し躊躇してしまうようなお店にもすんなり入れてしまう。


 マクドナルドもミスタードーナッツも嫌いではないけど、食事をするなら、静かにしたい。
 騒音の中の食事は、わたしは苦手だ。
 そしてまた、わたしが入りたいと思うお店は、得てして高校生、特に、わたしがちょっと苦手にする『今時』の女の子達は入ってこないから、ゆっくりできる。


そうして思いついたのが、前に前に一度だけ、ギャラリーへ行ったことのあるカフェ。
『FAUST』という、現代企業社の店舗の一つだ。



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立春


(そういえば今日はあいつの誕生日だったっけ……)


 あいつ、とはわたしの幼稚園の時からの幼なじみ。絵が上手くて、話し上手。卒業文集の表紙にクラス全員分の似顔絵を描いてしかもそれが似ていたのが驚いた。
 わたしに多大な影響を与えた1人だ。絵が上手かったけれど、さて今はどうしているのやら。
 ……となぜ急に今まで思い出しもしなかった嘗てのクラスメイトのことを思い出したのか。
 わんこの散歩に行くために、コートを着て携帯とMP3プレイヤーをポケットにつっこんで靴を履く。
 扉を開けて気が付いた。
 青い柊の葉が付いていた。
 

(そうか……今日は立春……)


 保育園時代は今よりももっと季節に敏感だった気がする。
 まぁ、年がら年中暦にかこつけてイベントを開いていただけの話なのだけれど。


(早いもんだ)


 わたしはわんこの首輪にリードを引っかけて、庭先にある2本の白梅の木を見た。
 つぼみはほとんど開いている。
 後1ヶ月もすればまたうちのお婆様に梅拾いにかり出されることだろう。



ume.jpg




 いつもの散歩コースには紅梅の木もあるが、そちらはまだつぼみは堅い。これが開けば、一気に春が訪れる。
 わたしの家の周りは畑と田んぼが多い。だから自然と季節の色を見ることができる。
 畑の脇に生えているぺんぺん草には白い花が付き、塀際に植えたアップルミントは青々として、どんどん自分のテリトリーを増やしている。


(……自己主張の激しいやつ)


 裏の畑に植えたレモングラスなんて一株でちっちゃく細々と生えてるのに。
 ……春になったら土の入れ替えでもしてやろう、うん。
 散歩コースは、小学校の時の通学路と、一級河川に指定されている川の岸、それから保育園の時に幼なじみとしょっちゅう遊びに行ったお宮さん。
 川岸まで行くと、ちょうど6時の鐘が鳴る。
 去年の今頃は、絶対に聞かなかった。
 でも、お気楽に過ごしていた子ども時代は毎日聞いた。

(早いもんだ)


 本当に、時の経つのは早いものだ。
 わたしの1つ上の先輩は先日高校を卒業し、弟はもうこの卯月で高校生。



 
sora.jpg





 空もまだ明るい。
 ほんの少し前まで5時近くになると暗くなって散歩になんか出てこられなかった。それに寒かったし。
 山の方は薄い靄がかかったような青。
 海の方は、まだ何とか太陽の気配を残しているけれど、きっともうすぐ薄い青が朱を覆い、またすぐ群青は闇に飲み込まれる。
 早く帰ろう。
 いくら暦で春が来ても、実際にはまだ北風が吹く。


(これ以上寒くなるのはちょっと勘弁)


 日中は弥生でも、夜はしっかり如月が残っている。


(……旧暦の方がまだ季節感があってて良いんじゃないの?)


 まだまだ春は遠い。
 傍らで、わんこが小さなくしゃみをする。


「……走って帰るか?」


 滅多に車の通らない旧道に入って、リードをはずした。


「あっ?! こら! ちょっと待て!!」


 人も犬も車もいないのは幸い。
 わんこは一目散に家に向かってかけだした。


(……そーいや、こいつも寒がり……)


 しまった、と思いつつ、わたしも走る。
 

(春が来たなんて絶対嘘だわ)


 まだまだ冷たい北風を顔に受けながら、わんこの後ろを追っかけた。



 
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魔女の月


tuki1.jpg





 今日、久しぶりに夜の汽車に乗った。
 少し体には堪えたが、思ったほどではなかった。薬がだいぶ効いているのだと思う。
 けれど実際、前通っていた学校の生徒や知り合いは乗り合わせていなかったから平気、と言うだけなのかもしれない。
 この前自転車の鍵を付けっぱなしにしていた話をしたが、運良く今日まで残っていてくれた。その自転車には、地元で使う自転車の鍵も付いていたので下手をすればそっちも使えなくなってしまう可能性があった。
 間抜けな自分を呪いつつ、でも自転車の鍵が手に入ったのでほっと息を吐いた。
 汽車の中で何度もコートのポケットに手を入れ、鍵があるのを何度も確かめた。
 日の落ちるスピードが、やはり少し緩やかになった気がする。
 汽車の中から外を眺めても、まだ空は群青色をしていた。
 いつもの駅で降りると、途端に冷たい風が構内へ吹き抜けていった。
 自転車置き場まで少し歩かなければならない。


(さむっ)


 コートの襟を正し、手をポケットに突っ込んで、首をすくめる。
 自転車を見つけて錠をはずし、サドルに足をかけてこぎ出した。
 ふと前を見ると、大きくてまんまるの月が顔を出していた。
 赤褐色で、なんとも不気味。


(紅月……だったけな)

 
 転校する前の学校では、わたしは図書委員をやっていた。中学2年の時からずっとだ。
 本好きな人、高じて知識人がよく集まり、掃除の合間には文学から人類学、社会学、情報、科学、生物、ととりとめも無く話したものだ。
 ある時、400番台(日本十進分類表・NDC)つまり、自然科学の棚の掃除を任された。
 その時、高校三年のH先輩が月の本を見つけた。
 残念ながらタイトルは覚えていないのだが、表紙に大きく赤い月の写真がレイアウトされていた。
 不気味、と二人で話していたら、N先輩が手を止めて写真をのぞき込んだ。
 見事に赤い満月を見て、「紅月って言うんじゃなかったっけ?」とH先輩の手から本を取り上げて、NDCの通りに元の場所へ戻した。


(紅って言うより、赤褐色)


 わたしはサドルにまたがり、空を見上げた。
 まだ地平線近かったので、普段見る月よりもだいぶ大きく、それに赤の月は何となく怖かった。
 小さい頃のわたしは今では考えられないほどの恐がりで、赤い月を見るたびに、何か良くないことが起こるのではないかと思っていた。
 今思えば、笑える。
 わたしはこの不気味な赤い月を「魔女の月」と呼んでいた。
 とんがり帽子をかぶった鼻の高いしわくちゃのおばあさんが、この月の下で黒猫と語り合っているのを想像しては、一人で怖くなった。
 本屋の前まで来たときいとこの家による予定だったのを思い出し、途中でUターンした。
 いとこの家は小さなお宮さんの前にある。
 そこでは、ちょうど月が樹の上に来てなんだか幻想的。
 ケータイで撮ってみようとなんどもチャレンジしてみたけれど、結局はどれも上手く撮れなくて少々がっかり。
 ケータイをポケットに入れ、いとこのうちへと急いだ。



 
tuki2.jpg






 用事をすませて帰っているとき、もう一度空を見た。
 やっぱり月はまだ赤い。
 小さいときに「魔女の月」と呼んだそれは、本当にルナシーを引き起こしそうなほどに幻想的で、また不気味だった。
 いとこに貸して貰ったマフラーを首に巻き戻し、音楽の音量を少し上げて、わたしは家路を急いだ。
 わたしのなかのルナシーが、「魔女の月」によって呼び覚まされないうちに。









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天泣


(あり得んわ……)


 と最初に思ったのは、学校が終わって自転車置き場から自分のを引っ張り出したとき。


(雨降ってるし……)


 今日は本当は時間割だけもらって午後の授業には出るつもりはなかった。
 でも授業はテスト対策だけだったから、「まぁレポートしても良いし、一回午後も出てみいや。慣れてくるから」との先生の誘いもあって、初めて午後まで学校にいた。ご飯も初めて学校で食べた。
 その時から順当に空は曇り始めていたのでちょっと心配していたのだが、案の定、授業の終わった二時頃にぽつぽつと降り始めた。


(本降りにならないことを祈るっ)


 自転車をまたぎ、市街へ向かう。
 雨はぽつぽつ降ったりやんだり、とわたしを少なからずいらいらさせた。


 何も今日でなくても良かったのだが、わたしはこの時無性にMP3プレイヤー用のケースが欲しかった。……ポケットの中へ入れるにしても、鞄の中に入れるにしてもごちゃごちゃして、SDカードのケースも容赦なく本体に激突を繰り返す。それが直接の原因ではないだろうが、約三千円の当時中学生のわたしには大変ありがたくて重宝していたのを傷だらけにし、とうとう去年の十月頃に壊してしまったという誠に痛い思い出があるので、それだけは避けたい。


 とりあえず気に入った小さいポーチは購入したは良いけれど、帰りのJR代のことを忘れていた。


(……残金、三百円なり)


 高知駅から自宅最寄りの駅までは三百五十円、仕方ないので一つ前の駅までの切符を購入。


 幸いわたしの乗った便はさほど混んでおらず、ほっとしたのもつかの間、発車して二十分もすれば駅に着く。


 駅に着いた頃はまだ雨はぽつぽつだったのだが、歩き始めて五分もしないうちに雨は勢いを増してきた。
 急いで自転車を置いている駅まで走ったのだが、いかんせんあまり通らない道、道順を忘れて迷い、普通ならば十五分ほどで着くものを、わたしは三十分かけて到着した。


 道行く人は、さぞわたしを不審がったことだろう。傘もささずに走る女。おまけに何度も同じ道を行ったり来たり。


 救いだったのは、すれ違う中学生がカッパも傘もささずに自転車を一心不乱に漕いでいたことだった。
 自分だけでなかったのが、何となく安心させた。


 やっと自転車置き場までたどり着く頃には、もう本降り一歩手前の勢いになっていた。



(コレはまずい……)


 と濡れたコートに冷や汗をかく。
 雨の匂いが着いたらどうしよう……ッなどと焦りつつも寒くなってきたのでマフラーを鞄から取り出して首に巻き、自転車を漕いだ。
 なんとしても本降りになる前に帰り着かなくてはならない。
 自転車を漕ぐ足に力を込める。
 二つめの信号に引っかかったときだろうか、急に空が明るくなった。というか、雲が多少引き、ちょうどその位置に太陽が来ていたからなのだが。
 信号を渡り、坂を下り始めると、前方にはぽっかりと黄昏が広がっていた。しかし雨は降っている。


(そういや、天泣って言葉があったっけ)


 前に買った「美人の日本語」で紹介してあったのを不意に思い出した。
 天泣とは「雲一つない空で雨、もしくは雪が降る様子」のことなのでこの空は『天泣』には当てはまらないか、と妙に納得した。というのも、前方からわたしの真上くらいにかけては文字通り雲はないのだが、駅の方、北の方角には厚い雲が見えた。
 それでも、これは『狐の嫁入り』には当てはまらないだろうか、『天泣』とまではいかなくても。
 よし、今日のブログのネタは決まったと濡れながら自転車を漕ぐ。
 しかし、家に着くとちょうど雨もやんだ。
 再び(あり得ん)である。
 いや、しょっちゅうあり得るのだが、どうしてもそう思ってしまう。


(嫌がらせじゃないでしょうね!)


 とわたしを見つけて駆けてきたわんこの頭をなでながら、玄関の門をくぐった。


「ただいま」



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